更年期の対策。自宅でできる対策方法から医薬品まで解説
更年期に入ると様々な不調が出やすくなります。これは女性ホルモンの低下によるもので、人によって出る症状も様々。
では更年期症状にはどういった対策が有効なのでしょうか?症状によって対策は変わるのでしょうか?
自宅でできる対策方法から医薬品などを解説します。
更年期障害の概要|更年期に起こりがちな症状
更年期とは、閉経を基準とした前後5年間、計10年間を指します。
女性ホルモンであるエストロゲンが減少して自律神経が乱れ、それによって不調となり、日常生活に影響が出るのが更年期障害です。
その症状は様々ですが、特に起こりがちな症状としては下記があります。
- ホットフラッシュ、動悸・息切れ、冷え性などの血管運動神経系の症状
- 肩こり・腰痛・背中の痛み、関節痛、しびれなどの運動器官系の症状
- 頭痛、めまい、不眠、不安感、倦怠感などの精神神経系の症状
- のどの渇き、ドライアイなどの皮膚・分泌系の症状
- 月経異常、尿失禁などの泌尿器・生殖器系の症状
更年期対策に効果のある生活習慣改善
生活習慣の改善は、更年期症状の緩和が期待できます。
食生活、睡眠、運動など、日々の生活習慣を見直し、変えることで更年期症状が改善することがあります。
ここでは自宅でできる対策をご紹介しますので、是非取り入れてみてください。
食生活
食事は1日3回。規則正しく、バランスの良い食事をとりましょう。
お仕事や家庭の環境で規則正しい時間が難しい場合も、きちんと食事をとるように心がけてください。
夜遅くに食べる場合は胃腸への負担を考えて、少し量を減らしてくださいね。
ホルモンバランスを整える食事をする
ホルモンバランスを整えるには栄養バランスの良い食事が大事です。
食事は主食:副菜:主菜=3:2:1が理想のバランスとされています。
主食は熱や力となる食品で、ごはんや麺、パンなどの炭水化物がメイン。
副菜は体の調子を整える食品で、野菜やきのこ、海藻など。
主菜は血や肉となる食品で、肉や魚、大豆料理などとされています。
牛乳などの乳製品や、果物も食べる事で更にバランスが良くなります。
参考:農林水産省の「食事バランスガイド」より
更年期に効果のある栄養素を取る
更年期の食事として特におさえておきたい栄養素が、女性ホルモンに似た性質を持つ大豆イソフラボン。
大豆にはたんぱく質やミネラル、ビタミン、食物繊維なども含まれているので積極的に摂りたい食品です。
ビタミンEを含むカボチャやアボカドも更年期には有効とされており、ビタミンA・Cと一緒に摂ると効果的です。
おすすめ料理としては、カボチャとほうれん草を、塩、こしょう、しょうゆ、バターで炒める簡単ソテー。
ほうれん草はビタミンAもCも含まれており、女性に不足しがちな鉄分が多く、他の食材と相性が良いので色々使ってみてくださいね。
睡眠
睡眠不足になると倦怠感も取れず、日中のやる気が出ませんよね。その上ちょっとしたことでイライラ・・・
精神神経系の症状の対策として、睡眠はきっちりととりましょう。
更に睡眠不足になると、食欲を高める「グレリン」というホルモンが分泌されやすくなり、ついつい食べ過ぎて食生活が乱れる危険性もあります。
質の高い睡眠をとる
人により必要な睡眠時間は異なります。「1日8時間の睡眠時間が理想」とは言われていますが、4時間でもすっきりと目覚めて疲れが取れる人もいます。大事なのはすっきりとした目覚めを感じる事。
寝る1~2時間くらい前にぬるめのお湯にゆっくりと浸かって、一度体温を上げることで良い眠りに。
また、脳を覚醒させるスマホは見ないなど、リラックス出来る環境を作ることが質の高い睡眠に繋がります。
運動
運動をすることで爽快感や達成感を味わうことができ、ストレスの発散にもなります。
お友達や家族と一緒におしゃべりをしながらの散歩はおすすめ。話すことで程良い刺激と、リラックス効果を得ることが出来ます。
また、適度な運動は質の高い睡眠にも繋がります。
継続的な有酸素運動を行う
運動の中でも有酸素運動であるウォーキングは、年齢的に落ちてくる体力や持久力の向上や、骨密度の改善になるので更年期の対策にはぴったり!
ハーバード大学の研究では、1日15分のランニングや1時間の早歩きがうつ病のリスクを減らす、という結果が出ています。
とは言っても、急にハードな運動は考えただけで面倒でやる気が出ないですよね。大事なのは軽くても良いので継続的に行うこと。
私は通勤時に意識をして、少し早歩きをしたりしています。思い出した時に行う程度なので、実行しない日もあるのですが、意識をして少し早歩きをした時には満足感を得られます!
家の中でも出来る有酸素運動であるヨガもおすすめです。
更年期障害の治療|サプリメントや通院による投薬
生活習慣の改善を行っても効果が感じられない場合には、一度婦人科で相談をしてみてください。
症状を診て、その人にあった対策や改善方法を見つけてくれます。
一般的にはサプリメントや漢方、医薬品、ホルモン補充療法などがあります。
サプリメントで更年期障害に効果のある栄養素を補う
サプリメントは、分類としては「健康食品」となり、その中でも国の制度で認められたものが「保健機能食品」となります。
保健機能食品とは「トクホ」のこと。「トクホ」という言葉の方が馴染みがあるのではないでしょうか。
トクホには性能や効果が記載されているので、その内容を参考にしてサプリメントを選べます。
以下は、更年期障害の対策に効果がある栄養素が摂れるサプリメントです。
エクオール
大豆イソフラボンから作られる物質で、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンと似た性質があり、近年注目されています。
更年期症状は、エストロゲンの分泌量が減少することが原因のため、エクオールで補う事で症状の緩和が期待できます。
マルチビタミン&ミネラル
各種ビタミンとミネラルをバランスよく含有したサプリメント。
ビタミンは他の栄養素と結合することで吸収率を上げたり、働きを良くする役割を担っています。
一般的に健康増進や不調の予防などに使用され、疲れやすい方にもおすすめ。
ビタミンの1日の必要量は少量ですが、体内で作り出すことが出来ないため、食事やサプリメントでの摂取が必要となります。
オメガ3脂肪酸
ホットフラッシュや、更年期によるうつ症状の対策として効果的なのがオメガ3脂肪酸。
オメガ3脂肪酸はその名の通り3種類の栄養素(酸)が含まれています。
脳神経を活性化させるDHA(ドコサヘキサエン酸)、動脈硬化や血糖値の改善となるEPA(エイコサペンタエン酸)、血圧を下げるα-リノレン酸の3種類となります。
ビタミン同様、食事やサプリメントでの摂取が必要となります。
但し、血圧などに作用をするため、持病をお持ちの方は必ずかかりつけ医に相談をしてください。
一般用医薬品で更年期障害への対策を行う
一般用医薬品でも更年期症状の緩和が期待できるものがあります。一般用医薬品とは、薬局やドラッグストアで処方箋なしに買える市販の薬です。
イライラやのぼせに効果的とされている「桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)」や、不眠や冷えの改善に「温経湯(ウンケイトウ)」などが代表的。
症状によって薬が異なり、第2類医薬品は副作用や薬の飲み合わせに注意が必要です。医師や薬剤師に相談をして適切なものを選んでください。
婦人科を受診し更年期障害の治療を行う
サプリメントや一般医薬品で症状改善が見られない場合には、婦人科を受診しましょう。エストロゲンを補うホルモン補充療法(HRT)や、体質改善のための漢方薬の処方を受けることができます。
また、不安感やうつなどの精神神経系の症状が出ている方には、抗うつ薬や抗不安薬があります。
医師に診断をしてもらうことにより、自分にあった治療方法を決めることができますので、辛い症状を我慢せずに受診をしてくださいね。
カウンセリングを受けて更年期障害への対策を行う
女性ホルモンにはイライラや不安感を減らし、ポジティブにする作用もあります。
そのため、更年期になると小さな事でイライラしたり、不安になったり、精神が不安定になる症状が現れます。
うつ病と違い、更年期の女性はその症状を自覚しているため、カウンセリングも受けやすくなります。
話すだけで気分が楽になったり、第三者だから話せることもありますよね。
更年期障害専門のオンラインカウンセリングなどもありますので、気軽に利用してみてください。
更年期障害の主な症状と対策方法
さて、ここまで更年期障害の主な症状と対策として、大きなくくりで説明をしてきました。
では実際にはどのような症状の時に、どのような対策を行うのが良いのでしょうか。
症状別にもう少し詳しく見ていきましょう。
① 熱い・顔のほてり・ホットフラッシュの対策
月並みではありますが、一番は涼しい部屋で休むこと。服も通気性の良いものを着ましょう。
辛い物や刺激のある食べ物は、発汗作用を上げてしまうため控えましょう。
もし症状が出てしまった時は、ウェットティッシュなどで首筋を冷やしたり、深い深呼吸をしてリラックスをしてださい。
関連記事:更年期の症状「ホットフラッシュ」とは?原因や対処法を解説
② 冷え症・寒気の対策
まずは服装に気を付けましょう。夏場でもエアコンの効いた部屋では特に要注意。
羽織物を一枚持ち歩いて、肘や首を冷やさないようにしてください。
個人的には夏はアームカバーがおすすめですよ。コンパクトに鞄に入り、日焼け対策だけではなく寒い時にも着用できます!
そして、冷たい食べ物や、体を冷やす白砂糖などはなるべく避け、体を温める発酵食品や生姜、根菜を摂ると良いでしょう。
他には、筋肉量を増やすことで基礎代謝量が上がり、体温も高くなるので日常的に運動を取り入れてみてください。運動をすることで体も温まります。
③ 倦怠感・疲れやすい症状・やる気が出ない症状の対策
基本的な対策としては食生活の見直しです。代謝が悪いことによって疲れやすい体になってしまうため、バランスの良い食事で改善しましょう。
「加味帰脾湯(かみきひとう)」という漢方もおすすめ。気血を整え、弱っている体を改善してくれます。
完璧を目指すと気分的にもしんどく、更にやる気が出なくなるので、肩の力を抜いて「ほどほどでいいや」と思うのも対策の一つです。これはストレスの軽減にも繋がります。
④ めまいの対策
更年期のめまいは自律神経の乱れやストレスによるもので、疲労や睡眠不足がトリガーになることがあります。まずは規則正しく、質の良い睡眠をとりましょう。
血圧が低くなってもめまいは起こるため、血流向上、自律神経のバランスを整えるビタミンEを多く含んだ食品を摂ることもおすすめ。
大豆やアーモンド、アボカドなどがビタミンEを多く含んでいます。また、血液をサラサラにしてくれるEPAやDHAを豊富に含む青魚も合わせて摂りたい食品です。
⑤ 頭痛の対策
頭痛には頭の片側がズキズキと痛む「片頭痛」と、頭全体が締め付けられるように痛む「緊張型頭痛」の2種類があります。頭痛は症状によって対策が異なります。
どちらもあまり我慢はせずに、市販薬でよいので早めに飲むようにしましょう。
片頭痛
閉経前に悪化しがちなのが片頭痛。更年期前から片頭痛持ちの女性も珍しくはなく、私も頭痛薬によくお世話になっています。
対策としては、まずは血管を収縮させるアルコールやカフェインの摂取を控えましょう。
痛みを感じたら安静にして、痛みを感じる部分を冷やしてください。
緊張型頭痛
疲労や長時間同じ姿勢でいることによる血流の低下が原因の一つ。
同じ姿勢を長時間取らず、適宜運動をすることが効果的です。血行を良くするためのストレッチもおすすめ。
片頭痛とは違い、冷やさずに、血流を良くするために体を温めましょう。
⑥ 不眠の対策
夜中に何度も目が覚めたり、なかなか寝付けなかったり。寝ているはずなのに疲れが取れなかったり。
「不眠」と言っても様々なタイプがあります。他の更年期症状が不眠を引き起こすことも。
対策として、まずは規則正しい生活を心がけましょう。
また、積極的に日光を浴びることで、平常心を保つセロトニンが分泌され、質の良い眠りにも繋がります。
覚醒作用のあるアルコールやカフェインは就寝前には控えましょう。
関連記事:【更年期のお悩み】不眠症の原因と対策
⑦ 動悸・息切れの対策
更年期には自律神経のバランスが崩れやすく、動悸や息切れなどの症状が現れやすくなります。
これは自律神経が拍動や呼吸などをコントロールしているからです。
症状が出た時の対策としては、まず深呼吸をしてリラックスをしてください。この時、腹式呼吸での深呼吸が効果的です。
ゆっくりと口から息を吐き出し、ゆっくりと鼻から息を吸い込みます。息を吸い込む時はお腹に空気を入れて膨らませることを意識してください。
この時に頭の中で数を数えると、余計な事を考えずにリラックスできますよ。
日常は、早寝早起きや3食きっりち食べるなど、規則正しい生活を意識してください。
⑧ 肩こり・腰痛の対策
血行が悪くなったり、筋肉が固まってしまうことで起こる肩こりや腰痛。筋肉は繋がっているため、両方の症状が出ることも多いです。
ストレッチなどの運動を生活に取り入れるで筋肉が柔らかくなり、鍛える事もできます。また、血行促進のために入浴習慣を持ち、体を冷やさないようにすることも大事です。
⑨ イライラ・不安・落ち込みの対策
更年期には女性ホルモンの減少により、ストレスホルモンと言われるノルアドレナリンをコントロールするセロトニンが不足します。
このセロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれるくらい精神安定に大きく関わっています。
セロトニンは日光を浴びることで分泌が良くなるので、積極的に外に出ましょう。ウォーキングなどの有酸素運動が、ストレス緩和に効果的と言われています。
また、カルシウムは気持ちを安定させる効果があり、ビタミンCはストレスに抵抗する力があります。
両方を摂取するために、牛乳にレモン汁を入れた「レモン牛乳」なんていかがでしょうか?量はお好みで混ぜるだけ。お家でも簡単に作れますよ!
関連記事:更年期の症状|感情(イライラ・不安等)の変化の原因・対策を解説
レモン牛乳の作り方
【材料】牛乳200cc、レモン1個 or 市販のレモン汁大さじ2、砂糖大さじ5 or はちみつ大さじ1
【作り方】レモンを絞って全てをよく混ぜるだけ!レモンは牛乳を凝固させる作用があるのでトロっとした感じになります。砂糖やはちみつは味を見ながらお好みで調整をしてください。
⑩ 陰部・おりものの匂い・かゆみ対策
40代になるとおりものの量が徐々に減り、更年期の終わりが近づくと腟内の潤いがなくなり、乾燥しやすくなり、かゆみが出たりします。
おりものは、通常時でも少し酸っぱいような匂いはしますが、強い匂いの時は要注意。雑菌が繁殖している可能性があります。
また、乾燥やグリコーゲンが減少することが原因で炎症が起きる、萎縮性腟炎による痛みやかゆみといった症状が出ることもありますので、気になる場合はすぐに婦人科を受診してください。
セルフケアとしては、デリケートゾーンを専用の洗浄剤を使って、前から後ろに向かって優しく洗います。大陰唇と小陰唇のヒダの内側も丁寧に洗ってください。
洗いすぎると腟のバリアがはぎ取られ、症状が悪化するので要注意。洗い終わった後は専用のジェルやクリームで保湿も忘れずに。
⑪ 抜け毛・薄毛など、髪の対策
加齢によるボリュームダウンは自然なこと。
地肌が透けたり、分け目が広がり目立ったり、1つの毛穴から生える髪の本数が減っている時は更年期抜け毛の可能性があります。ヘアサイクル(毛周期)が乱れ、髪の成長が追いついていないためです。
髪の毛は見た目にも影響するため、女性としてはやはり気になりますよね。
髪の99%はタンパク質。対策として大事なのはバランスの良い食事、睡眠、運動の規則正しい生活です。
睡眠は一見関係ないように思えますが、実は髪の成長に欠かせない成長ホルモンの分泌に関わっているのです。
運動は髪に栄養や酸素を供給する血流アップにつながります。
最も有効なのは医薬品やホルモン補充療法となりますので、即効性を求める方は皮膚科か婦人科を受診してください。
関連記事:髪の毛の悩み│更年期障害体験談
⑫ 発汗・寝汗の対策
ホットフラッシュと同じく血管運動神経症状の1つです。対策としてはホットフラッシュと似ていますが、ここでは特に寝汗についてご紹介します。
まずは就寝前はリラックス。スマホは横に置き、好きな音楽を聴いたりハーブティーを飲んだり。
適度に運動することもおすすめ。ストレス発散とほど良い疲れで良い眠りに繋がります。
直接的な対策としては、ベッドや布団に吸収性の良いタオルやパッドを敷きましょう。
夜中に寝汗で目が覚める方は、あらかじめベッドの近くに着替えを用意しておきます。目が覚めた時になるべく部屋は暗くしたまま着替えると、そのまますっきりと眠りにつけます。
医学療法になるとホルモン補充療法が効果的です。
⑬ 肌荒れの対策
エストロゲンは皮膚のコラーゲンを増やしたり、水分量を維持させる働きも担っています。
そのため、更年期になると乾燥やかゆみ、湿疹といった症状が起こりやすくなるのです。日頃からの対策としてはボディミルクやクリーム、ローションなどで保湿をすること。
出来れば朝と夜、2回の保湿が効果的。濡れた後は特に水分が飛びやすいので、入浴後や洗顔後は意識して保湿を行ってください。
また、肌を清潔に保つことも大事です。
関連記事:更年期の肌のかゆみや乾燥の原因とは?予防対策について
まとめ
様々な症状と対策をお伝えしましたが、女性ホルモンであるエストロゲンは、女性にとってとても重要だということがお分かりいただけたかと思います。
エストロゲンが低下することで自律神経の調整がうまくいかず、体の不調だけではなく精神の不調にも影響を及ぼしています。
1つの症状が他の症状に影響をする、という事が多いのも厄介なところ。
そんな更年期のどの症状の対策としても有効なのが、バランスの良い良い食事、良質な睡眠、適度な運動です。
ただ、劇的な効果や即効性はないので、更年期に限らず常日頃気を付けておきたいことです。
即効性を求める方は婦人科を受診し、症状に合った適切な治療法や医薬品を相談してください。
もし、あなたの周りで生活習慣の乱れた女性がいたとしたら、更年期ではない時期から規則正しい生活習慣が大事なことを教えてあげてくださいね。
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